【41】 智絵「誘拐されたんでしょ?だったら誘拐犯って事になっちゃうわね」 佳織「んな馬鹿な。…戻してこようか。ドアの前に。え?意味ある?それ?」 智絵「そもそも、無理。いないの。ベッドの上から姿を消しちゃった」 佳織「全部探した?バスルームとか、クローゼットの中とか、棚の中とか」 智絵「何でそんなところに入れるのよ」
【42】 佳織「あの子はどこ!」 早希「だから。大きくなっちゃって。…あれ?今、また成長した?」 三輪「……確かに。また、年を重ねた気がする」 佳織「私が必死になってるのに馬鹿にしないで。っていうか。誰!」 早希「やっぱり、そうなりますよね。……ほら。自己紹介して」 三輪「…あの、俺は…、…名前は…ない。…昨日まで、赤ん坊だったから」
【43】 早希「待って。よく聞いて。人が成長するのは、百種類以上の成長ホルモーンの働きとされてる。でも、中にはその成長ホルモーンが人とは違う働きを見せる場合がある。そのホルモーンの異常で、通常より早く成長する事だってあると思うの。だから、そのホルモーンの」 佳織「『モーン』って伸ばすのやめて。気になって話が入ってこない」
【44】 智絵「何かしら資格はお持ちですか?民間なんで、必ず必要ってわけじゃないんですが、それに類似する何か。例えば彼女は保育士の資格があるし、この人はは介護士の資格。私は元々、助産師をやってたり、何かそういう、この仕事に役立てそうな何か。医療系とか」 三輪「医療……。あ。昔、衛生兵を。少し」 智絵「えいせいへいって。何」
【45】 佳織「ちょっと、何なんですか。本当に。からかわないでください」 三輪「その生まれ変わりが俺だ。信じなくても、アンタの顔を知ってる」 佳織「馬鹿ばかしい。もう時間だわ」 早希「…探しに行くんですか?…無駄足だと思いますけど」 佳織「違う。駅前のパン屋に」 三輪「この時間を狙っていけば、並ばずにすぐ買える」
【46】 佳織「長い間離れて暮らしていたわけですから、祖父の体調の事まで詳しくはわからない部分もありまして。何か不審な点でも?」 水本「君が彼の元に戻ってきたのと同時だ。あの日、何があったんですか?」 佳織「発見した時には、既に倒れていましたから。何が言いたいんですか?」 水本「君、本当に三輪さんのお孫さん?」 佳織「そうですが」
【47】 水本「こういう場合、別れた旦那さんって、何もしてくれないの」 金森「私の為じゃない、あの子の為を思って別れたんだから。力を貸してもらおうだとか、援助してもらおうだとか。全くない。何なの?そんなに物珍しい?私たちが」 水本「いやいや。なかなか生きづらい社会だなぁと思って」 金森「だから。新入りがさ、知ったような口を利くなって」
【48】 木内「この人、学生服着て、その塾に通いだしたんです」 聖美「気持ち悪い。ていうか。怖い。それわきまえた人の行動ですか?」 木内「他の学生、みんなやめていって、ついには、塾自体もなくなった」 日野「見事、内部から崩壊させてやったんだ!」 木内「ちょっと常軌を逸してるのよ!」
【49】 聖美「で、アナタ方、誰なんですか?」 日野「そっちこそ、ここで何をしている。どうやって入ってきた」 聖美「鍵、持ってるんで」 日野「…何の権利があって。誰なんだよ」 聖美「いつ、亡くなったんですか?」 木内「あの。倒れられてから、数日間、昏睡状態にあったんですが、3日前にお亡くなりになりましたね」
【50】 水本「何をブツブツ言ってるんですか。警察がどうしたんですか」 日野「いや、そんな事は言っていない」 水本「何だ。てっきり、とうとう警察を呼んだのかと」 日野「何でそんな事するんだよ。例えば?捨てられてた?赤ん坊みたいな何かを?他の部屋の前に放置したとか?ないない。そんな事ない」 水本「すごい例えが具体的なんですけど、何なんですか、それ」
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撮影者:佐藤淳一 ※この画像の著作権は団体並びに撮影者に帰属します。