【11】 水本「でも、いいタイミングだったね。あ。変な意味はないよ。だって。お爺さんと同居して一週間も経たないうちに、こういう事になって」 土屋「言い方に変な意味入っちゃってますよ」 水本「それでアナタ、その資産が。何て言うの?転がりこむって言うの?」 土屋「だから入っちゃってるって。下世話な顔になってます」 水本「あ。変な意味はないから」
【12】 水本「何かトラブルでもあったんですか?」 日野「このマンションは、専有部分を住宅として使用するものとして他の用途に使ってはならないと、規約の第12条に明記してある」 佳織「ええ、そうですよね」 土屋「つまり、誰かが住居以外の使用をしていると言いたいわけですか」
【13】 佳織「何を言ってるんですか。保育園ですよ?保育園って言ったら、大きな建物があって、お外には遊べる遊具みたいなのがあって。じゃあ、お部屋の中に?そういうものがあるって言うんですか?ないない」 日野「あるわけないだろう。保育園という言葉の響きが誤解をよんでいるな。保育所というか。一時預かりというか」
【14】 佳織「私、あまりそういう音に鈍いんですよね。気にならないんです。家の電化製品の音とか、インターフォンとかも聞こえないし、今、日野さんが話している声すら聞こえません。もう何も聞こえません」 日野「それはまず病院へ行きなさい」
【15】 金森「あの、確認なんだけど。皆さん、あの部屋が今、どういう事になっているか、知らないって事?アナタが、誰かに貸したわけでもない?」 佳織「さあ。身に覚えがありません」 金森「…あ、そう。そんな感じなんだ。…ダメじゃん」
【16】 木内「…いや、違うわ。私、心当たりがある。あれはね、宗教よ」 日野「まあ、とにかく。事実だとすると、今すぐにでもやめさせるべきだ」 木内「…宗教」 佳織「保育園じゃない事だけは確かだと思います」 木内「…宗教」 土屋「木内さんの顔も宗教っぽいですよ」
【17】 土屋「亡くなった三輪さんが、その団体に、部屋を貸し出したって事になりますよね。知ってたんですかね」 水本「そんな判断もつかない状態だったんじゃないの?まあ、とにかく規定で専有部分を住居以外に使用するのは禁止していますから」 金森「それに違反すると?」 土屋「例えばそれで裁判になったとすると、圧倒的に不利ですよ」 金森「それは何と言うか。困ったわね」
【18】 三輪「何で囚人が市場に買い物に行けるんだよ」 女「問題はそこなんですよ。あ、あ、あ、アナタは生まれました。で、例えばこの市場というのが、何かの比喩であって」 三輪「待て待て!いちいち言う事が急だな。私が生まれた?どういう事?」 女「ですから。アナタは刑務所にいるんです」 三輪「違う違う。いないいない。お前、話が混ざってる」
【19】 三輪「だってお前、生まれ変わりっつったら、全然知らないおっさんとおばさんの間に生まれるって事だぞ」 女「お前もおっさんだがな」 三輪「知らないおばさんの、その、お、お、…お乳を吸うって事だぞ」 女「母親ですよ?知らないおっさんのお乳よりいいでしょう」 三輪「それは考えられ得る限りの最悪のケースだな」
【20】 日野「…え、何で?こんな所に。…生まれたばかりじゃないか?どうしたらいい?落し物?警察に届ける?何て説明したらいい?部屋の前の落ちてました。そんな事ある?でも本当なんだから仕方ないよな」
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撮影者:佐藤淳一 ※この画像の著作権は団体並びに撮影者に帰属します。