【1】 キコ「誰?もう誰か来てるの?その声は、ハムくん?」 ハム「その名に意味はない。俺は月の救世主。ルナブリンガー猛(タケル)」 キコ「まだみんな来てないんだね。お父さんもお母さんもなかなか寝なくて。家を抜け出すの、大変だったよ」 ハム「今すぐに立ち去れ。ここは間もなく、光を賭けた激しい戦場となる」
【2】 ハム「確かに言った、『月を救いたい』と。俺はその願いを聞き届けた」 キコ「もしかして、んー。あれ、もしかして。『月をすくう』って、そういう意味じゃないんだ。水に映った月を、すくいたいんだって」 ―キコ、金魚すくいの「ポイ」を見せる。 キコ「その為の道具を持ってきてねって言ったよね。私はこれ」 ハム「…『すくう』ってそっちの」
【3】 キコ「ほらやっぱり、皆、ちゃんと「すくう」為の道具をもってきたよ」 ハム「うう…。うう…」 キコ「ハムくん、泣かなくてもいいって。私のこれ、貸してあげるから」 ハム「だって、それ、キコちゃんのだろ?いいのかい? 」
【4】 ハム「あのさ…、何で、みんな、月を取りたいの」 トミコ「お月さまに行ってみたいの。空にあるのには手がとどかないから」 タケシ「死んだ人は、月に行くっていうだろ。取り戻すんだよ」
【5】 ハム「俺にとって彼女は暗闇の中で静かに光る月。などではなく、太陽のように明るく、そしてどこかぶっとんだ子だった。内気で友達付き合いも下手だった当時の俺は、そんな彼女に一瞬で惹かれていた。だが今となってはその想いも届かない。彼女は朝になっても還ってこなかった。既に白んだ空の向こうに、月は沈んでいた」
【6】 三浦「噂ってのは尾ひれがつきますから。こういうモノでもを売りにしないと、この部屋の借り手なんて、この先、いないと思いますよ」 屋久「だからって。詐欺って事だろ。ただの置物なんだから」 三浦「今はただの置物ですが、スピーカーを搭載する事で電話として使える。カメラを搭載する事で防犯カメラにもなるし映像も記録できる。それどころかいずれは、コミュニケーションもとれたらいいなって」
【7】 大海「今更善人ぶるな。お前が今までしてきた事だって胸張れるのか。ここで会ったのも何かの引き合わせだ。金ならいくらでも出す」 金弥「専務。これ以上関わらない方がいい世界もありますよ」 大海「偉そうに説教してんじゃねぇよ」
【8】 大谷「タラサンダーン、カエンビー、オーペイペイ、シューキンペイ。ペェイ!ペェイ!!…除霊の方、滞りなく勤めさせて頂きました」 真奈「やっぱり、いるんじゃん」 屋久「念の為だよ。どうなんでしょう。いわゆる『霊』みたいなものは」 大谷「完全にペイラブルです」
【9】 大谷「…何だ。手が。手が。動いてる。あああ、勝手に動いてる」 屋久「どういう事ですか?それはアナタの意思じゃなくて?」 真奈「これも霊の仕業?」 大谷「あああ、こわい、やだよぉ、こわいよぉ」 屋久「怖いって言っちゃってるけども」 真奈「この人、本当に霊能者なの?」
【10】 三浦「君の名前は?名前を書いて」 大谷「あー、動いてる動いてる」 真奈「『き』『こ』。キコ。って名前なの?」 屋久「それ。半世紀前に亡くなった女の子の名前だ」
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10
撮影者:佐藤淳一 ※この画像の著作権は団体並びに撮影者に帰属します。