タイトル[あらすじ].png

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あらすじ.png 上演記録.png キャスト.png 背景設定.png

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租税に関する啓発活動を主にしている豊島事業会の社会貢献委員会では、間近に控えた小石川小学校での税金教室の打ち合わせの為、定例委員会が開かれていた。会議室のテレビでは、若手起業家としてメディアに頻出している長崎(森田晋平)のインタビューが流れている。いわゆる意識高い系を彷彿とした喋り方と、椅子の座り方が浅すぎる態度にメンバーたちは、好奇の目を寄せている。委員長の堀之内(熊坂貢児)によると、健康食品通販で年商20億というこの長崎が新たに入会するという事で、同じようにメディアに頻出し、エステサロンを多数経営する染井(小舘絵梨)の顔色を伺うが、染井は何の気にも留めていない様子であった。同じく最近入会した千早(坂本ともこ)は長崎の顔に見覚えがあったが、思い出せないでいた。

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千早は、テーブルの上に置かれた豊川(なしお成)の会社が開発中としている音声入力システムに興味を示す。喋った言葉がそのまま印字されるというもので、議事録作成の為に試用されているが、その精度は悪く、喋った言葉の1割程度しか印刷されなかった。各自が今日これまで喋った言葉が少しづつ集められて出力された様子は、まるで源泉徴収だと若葉(新野アコヤ)が面白がる。「言葉は税金」とみなし、有意義に使うべくそ余興として、これらの印刷された言葉を適当に割り振って、会議の中で自然に喋れるのか、というゲームが大和田(小原雄平)の提案で始まる。事情を知らない堀之内の主導で税金教室の役が割り振られる打ち合わせの中、一同から繰り出される不自然な会話が堀之内を翻弄する。

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誰もいない会議室で千早は、着ぐるみの「タッくん」と向き合っていた。税金教室では新入会員が担当するという着ぐるみである。そこへ堀之内を訪ねて長崎が訪れる。テレビで見たままの長崎に戸惑いつつも、税金教室への参加を呼び掛ける。千早は「タッくん」の役をそれとなく長崎に促してみると、彼は意外にも乗り気であった。千早は長崎の素性を聞くが、長崎は唐突に宇宙の話を始める。いつか自分の力でロケットを飛ばし、宇宙旅行会社を作るのが夢なのだと。その話の端々から千早は彼が、かつて自分の実家の隣に住んでいて、雷の日に凧を揚げて、落雷し家が全焼した「ジョージ・フランクリン」こと、長崎穣示であると思い出す。再会した幼馴染の変わった様子に千早は呆れつつ、幼い頃の夢に邁進している姿に少し安心した。

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小石川小学校での税金教室の当日。蒸し暑い体育館倉庫の中で、各々の役割の為に待機している。舞台上では染井がつつがなく司会をするものの、壇上では長崎が扮した、座り方の横柄なタッくんや、普段とは違って、爽やかな語り口で「北の国から」のセリフを頻発する消防士役の大和田、狂気の塊のような税金博士を演じる地蔵堂(道井良樹)が段取りを無視して傍若無人に振る舞い、児童たちを戸惑わせている。教材アニメの時間となり、DVDの再生を操作した高松(國崎馨)は地蔵堂に機材を任せて休憩に出かけていく。「税金のある世界とない世界では、どちらがいいのか」というテーマのアニメであるが、地蔵堂が誤って機材を叩いたため、途中で終了してしまう。堀之内は慌てて、進行の変更を指示する。

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舞台袖では長袖の服を着ている並木(吉岡優希)を豊川が咎める。強引に捲った袖から、並木の腕にひどい痣があるのを見つける。並木は夫の家業を切り盛りする傍ら、2歳の子供を育と、義父母の世話に追われていた。日頃から悩みを誰かに相談することなく、昼間、誰もいない事業会の事務局にやってきては、病んだような不気味な絵を描くのを息抜きとしていた。時折、義母への不満を打ち明ける並木と、年若い嫁と上手くいっていない豊川は、相手側の言い分がわかる身として、お互いをそれぞれの義母と嫁に見立てて、イライラをぶつけ合う事も多々あった。その痣に、義母からの暴力を疑った豊川と若葉は、本番中の壇上にもかかわらず並木に問いただす。そんな中、着ぐるみを纏った長崎は、あまりの暑さから倒れてしまった。

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小石川小の教室から2週間後。長崎もすっかり会に馴染んでいたが、千早は未だに彼がどうして入会したのか疑問であった。長崎が言動とは裏腹に、税について真剣に考えている事に彼への見方を変える。長崎は千早が広告代理店だと知り、自社の広告を1000万円で請け負ってほしいと持ち掛ける。次回の千登世小の教室が迫る中、若葉は異様に意気込んでいた。彼女の娘が通う学校だからである。喫煙所では荒井(片桐俊次)と豊川と高松がまさにその娘の話をしていた。若葉が資格を取るために、育児をしなかった事が、現在の状況を招いていると説明する荒井に高松は、原因が荒井の女性関係にあると暴露する。荒井が豊川に説教をうけている所へ、堀之内がやってきて、千登世小の教室を中止するように親会から通達されたと告げる。

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だが堀之内にはどうしても中止したくない理由があった。堀之内は千登世小の担当女性教師に恋をしてしまい、教室を楽しみにしている彼女の為にもやめるわけにはいかなかった。堀之内は彼女と結婚まで考えているつもりで、すでに高松の式場を抑えて何度も打ち合わせまで重ねていた。その事情を知らない一同は、教室を強引に開催しようとする堀之内を責めるが、娘の顔がみれるチャンスを逃したくない若葉や、その気持ちを汲んだ荒井と染井が賛成し、事業会の名をださず、また税務署の教材を使用することなく、どうやったら教室を開催できるかを考える。アニメ教材は千早が台本に起こして全員で寸劇をする。児童たちに人気の「一億円のレプリカ」は長崎が用意する。など、知恵を出し合って独自の進行を考えていった。

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問題は着ぐるみの「タッくん」であったが、並木が描いた絵を元に新たなキャラクター、青色申告を推奨する「アオイロくん」を作り出す事となるが、その役の長崎が遠回しに拒絶したため「目には見えない」という存在で決着する。アニメ教材を台本に起こした千早は、使用する音響素材について高松と打ち合わせをしていた。そこへ長崎が広告の依頼についての話がしたいと持ち掛けた為、会議室を後にする。その後、堀之内がやってきて、披露宴の打ち合わせをしたいと、高松に音楽と余興で使うクイズ問題を手渡す。喫煙所では荒井と若葉が娘の事を案じていた。若葉は自分の気持ちをちゃんと娘に伝えられていない事を悔いていた。複雑な家庭にしてしまった、その償いとして、せめて税金教室だけは成功させたいと誓うのだった。

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千登世小の教室を明日に控え、寸劇部分の段取りが確認された。アニメ教材に登場する人物たちに扮して、素人ながらもたどたどしく、不慣れで過剰な演技に熱中するメンバーたち。その中、一人だけ「妖精」という役割が与えられた地蔵堂だけは、役を消化しきれず、悩みぬいていた。一同は明日の成功を誓い、この日は散会する。散会した会議室では、日頃から迷惑電話が頻繁にかかってくる染井に、また不審な着信があり、彼女は不満そうに部屋を出て行った。誰もいなくなった部屋で千早は長崎に広告依頼の一件について問いただす。長崎の要請とは、広告費を架空に計上するという脱税の片棒を担がせるものであった。そして誰も聞いていないはずのこの会話は、豊川が開発した音声入力システムだけが静かに聞いていた。

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そして当日。並木は自分の車に積んであった「アオイロくん」用の青い全身タイツが紛失している事を報告する。が、それは使用しないことになっていたので誰も取り合わなかった。冒頭から染井の様子は悲壮感に溢れておかしかった。消防士役の荒井は極度の緊張で、自分の好きな車の事だけを流暢に語り、若葉を失望させる。本来の消防士役の大和田はその様子に顔を歪めていた。荒井のあまりの酷さに胃が痛みだした大和田は外へ空気を吸いに行く。ここで高松が税金博士役の地蔵堂は行方不明であることに気づく。代わりに登壇した長崎は、税務署批判を始めたり、児童の不安を煽ったり、最終的には宇宙の話をしだす始末。躓きながらも、段取りは進行し、アニメ教材の再現の時間にいたる。何事もなく幕が開いたかに思えた。

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会場に娘の姿を見つけた若葉は、与えられた役柄を無視して、壇上で一人語りを始める。千早の制止を振り切り、娘に対して抱えていた感情を爆発させた若葉のせいで、寸劇の設定は乱れ始める。外から戻ってきた大和田は、自分のトラックに積んであった青い塗料が少し無くなっている事に気づく。やがて台本通りに「妖精」の登場の段となり、登場音楽を流すべく高松がPCを操作する。流れたのは堀之内の披露宴で流す予定の新郎新婦入場の音楽であった。そしてその音楽を背景にソレはやってきた。並木が描いた「アオイロくん」そのものであり、地蔵堂が解釈した「妖精」である。地蔵堂は音楽に合わせて不気味な踊りを舞い、会場で悲鳴が飛び交う。そんな混乱の中、染井は誰かと電話をしていた。会話の内容を長崎は不審に感じる。

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並木は登場人物の境遇を自分に重ね合わせ、本番中の壇上で夫や姑への不満を噴出させる。日頃から嫁にいら立ちを抱えていた豊川は、逆の立場としてそれに反論する。2人とも登場人物としての役割を忘れ、互いを互いの嫁姑に見立てて本音をぶつけ合った。その結果、物語は破綻したが、2人の関係性に少しだけ進歩がうかがえた。壇上では千早が一人奮闘するも、堀之内のお色直しの曲で再登場した地蔵堂の邪魔が入る。染井の様子がおかしい事から、事情を問い質すと、娘が誘拐され、一億円の身代金を要求されているとの事であった。長崎は、一億円のアタッシュケースを渡す。だがそれはレプリカなどではなく、本物が入っていた。染井が身代金受け渡しの為、中座した事から、税金クイズのコーナーは豊川が担当することになった。

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クイズの問題を高松から受け取り、意気揚々と登壇する豊川。そこから出された問題はすべて堀之内に関するものであった。高松は焦って、披露宴で使うクイズ問題を渡してしまったのである。念願の司会ができて舞い上がっている豊川はそれに気づく余裕などなかった。披露宴のクイズの最中に公開プロポーズを考えていた堀之内は、力なく登壇して、意中の女性教師に向き直る。出会って1ヶ月で特に交際をしているわけではないという状況を知らされ、メンバーたちが困惑する中、堀之内は彼女への思いをぶつけ、そして当然の結果がもたらされる。そこへ手ぶらの染井が戻ってくる。アタッシュケースは学校を出たところで、国税局に押収されてしまう。長崎に疑惑の目を向ける千早。一方で荒井は大和田が意識を失っている事に気づく。

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翌日の会議室失意の堀之内を他所に、一同は大和田を気遣う。大和田は胃に腫瘍が見つかっていたものの、治療するのを拒否していた。自分に医療費が使われるのが無駄だと吐き捨てる大和田を若葉は叱る。人として生きるのを保証されるために税金は使われるのだと。
地蔵堂は昨日のあの状況の中、小学校の駐車場で、染井の娘が担任の車の中に閉じ込められているのを発見していた。染井には担任から恨みを買う理由が思い当たらなかったが、豊川は犯行理由に一定の理解を示した。染井は会を休会し、娘との生活を第一に考えると告げる。そして若葉も娘と2人きりで食事の約束があるため、早退していった。元妻を送り出した荒井はふと、一つ空いた椅子に目をやる。脱税疑惑がかけられた長崎が座っていた椅子であった。

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千早は出頭前の長崎の部屋を訪れていた。いくら納税したところで、自分が望んだような社会にならない事に日頃から不満を感じていた長崎は、持てる者は何事も国や税金なんかに頼らず、自らの資力で社会を切り拓くべきだと考えるようになっていた。その考えを千早は「身勝手」と切り捨て、社会的な弱者への想像力が働いていない長崎を叱った。そこにはかつての自信に満ち溢れた青年実業家の姿はすでになかった。今後の事聞かれ、長崎は税率の低いマルタへの移住を計画していると告げる。自分の言葉が響いてない事に呆れる千早。だが、それが長崎だということも、子供のころからよく知っている。やがて時間が近づき、長崎は千早との宇宙旅行を約束して出頭する。最後に長崎はマルタがどこにあるのか千早にその場所を訊ねた。

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