机の上ではこちらが有利【物語背景】 of シアターグリーン3劇場連動企画

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BISKIA[ビスキア]の村民にとって、村の外というのは極力自由に行動すべき場所ではなかった。子供の頃は村外に出るのを禁止され、それは成人してもなるべくならば忌避したい事であった。何故なら、外には得体の知れない瘴気が充満しているからである。それは日によって、または人によって受ける影響差があるのかもしれないが、現に古来より、村外に出て気を失ったり、奇行に走る者がいるのは確である。村にはただ一つ決まり事がある。村外に備え付けられた器のそれぞれにur[ウル]をくべて、決して絶やしてはならない事。器からは絶えず、煙のようなものが立ち上がっていた。もしこの煙が途絶えた時、村に災いが降りかかるという。もちろん、そんな迷信を誰もが本気で信じていたわけではないかもしれない。それでも、この決まり事は忠実に行われてきた。

村の日課は、村外のPlazak[プラザ]にある井戸へ行き、urを汲んでくる事であった。井戸は2つあった。一部の学識者は、urによって発する煙が、村外の瘴気が中に入るのを防いでいると考えていた。この村を巡って2つの軍勢が対峙していた時でさえ、この日課は続けられた。そもそも、多くの者は戦争という事態を重く見ていなかった。それは人間の仕事ではなく、ALの仕事であり、例えそれが目の前で行われていようと、自分たちが巻き込まれる事はないと思っていたのである。ところがやがて看過できない問題に直面する事になる。

新しく定められた国境はやがて村の門を塞ぐ壁に成長し、東西の自由な往来どころか、村外に出る事も困難となる。村を覆う煙は徐々に薄れ、上空からES[エス]やIM[アイム]の光が差し込むようになった。勇気ある者は壁を伝い、村外への梯子をおろし、果敢にも井戸まで辿りついて英雄視される事となった。2つの井戸もやはり、国境線で東西に分断されていた。urをくべる器もきっちりと東西に1つずつ分けられていた為、東西両民は、それぞれがurを汲みに行く必要があった為、それぞれに井戸が振り分けられたのはせめてもの幸運であった。図らずも、Plazak は、分断された東西両民が、ごくごく限られた時間の中で再会できる場になりつつあった。ただし、必要以上の対面、及び、逆側への侵入がないよう、お互いの厳重な監視の下である。

ある日、東側のurを汲みに行った者がいつまでたっても帰ってこない事があった。様子を見にいってみると、井戸の傍で、見張りと共に気を失い倒れていた。後に事情を聞くと2人とも気を失う直前の出来事は覚えていないらしい。urを汲む籠も紛失していたため、何者かが持ち去ったのではないかと結論づけられ、西側の者の仕業だと考えられた。実はこの頃、西側の井戸は枯れつつあった。近くに並ぶ2つの井戸でどうしてここまで差が出るのかは不明だが、限られたurが尽きるのを恐れた西は、東にurを分けてもらう事もしばしばだった。その経緯もあり、東側は、無償で譲っていたurに値をつけ始めた。西側は猛然と抗議するも、代表者不在の状態で纏まりを欠いていたが為、泣き寝入りするしかなかった。ここに至り、東西BISKIAの井戸を巡った対立が表面に現れる。西側では、連日のように対策を練り、地面を掘り、地下からurの水脈に辿りつこうと主張する気骨のある者もいたが、それにはまだ時間がかかりそうだった。だが彼らの誰もがまだ気づいていない。今度は東側の井戸が急激に枯渇しつつある事を。Plazakを覆うLG[エルジー]は所々晴れつつあり、ESとIM[アイム]の光が差し込むのであった。

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