【1】 尚雄「家内はこういう、何というかフワッとした所がありまして。家政婦なんか務まるかどうか」 清美「住み込みで働ける家政婦を探していたんです。そんな時に、川上さんのお宅の火事の話を聞いて何かお力になれればと」
【2】 尚雄「ああ、部長、どうも。ご心配おかけしました」 柴田「お。川上か。無事で何よりだよ」 清美「しばらく奥さんが住み込みで家政婦として働いてくれるんです」 柴田「夫婦そろって、常務の懐に飛びこむわけだな」 尚雄「できれば常務に直接、お礼をと思って来てみたのですが」
【3】 清美「―江島でございます。はい?本当ですか?はい。わかりました。…弘が、交通事故にあって、昭和医科大病院に搬送されたって」 實智子「弘さまが?」
【4】 教子「この数日間、大宮のモーテルに籠って一歩も出ない生活を旅行というのかしら。問題がありましたか?問題だらけよ。嘘だったの。会社の人間の目を逸らす為に自分がさも長期休暇中だと装って」 實智子「ええ?何の為に」 教子「さあ。何か悪だくみをしているに違いないのよ。私にすら教えず」
【5】 實智子「奥様、旦那様を…誘拐したと。電話の向こうの方が仰ってます」
【6】 由子「私……すいません、上手く思い出せない。頭がずきずきして」 千夏「記憶がないんですか?…どこかで頭を強くぶつけたとか」 由子「…そう言われれば、頭をぶつけたような、痛みが」
【7】 柴田「…果たしてそうだろうか。これを見なさい」 千夏「………彼女は」 柴田「…私も今、そんな結論に達せざるを得ないと思ったところだ」 千夏「もう一人の家政婦の方ですよね?」 柴田「なぜ!なぜこの状況でその結論がでるんだ!」
【8】 保彦「命までとられたわけじゃない。足ぐらいで済んだんです」 教子「…何の話よ」 保彦「…何の話ですか?」 教子「夫が誘拐されたの。電話があったんです。それも予定通り?」
【9】 教子「あの人なんか、帰ってこなければいいなんて言ってしまったから」
【10】 柴田「…落ち着いて聞いてくれ。誘拐事件だ」 保彦「知ってます。たった今、聞きましたので」
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撮影者:佐藤淳一 ※この画像の著作権は団体並びに撮影者に帰属します。