劇団を結成して以来というもの、私の元へは数多くの質問が寄せられます。

中でも一番多く、即答に窮するのが、「Q.劇団名の由来は?」というもので、未だにこの由来を伝え切れていません。なるべく正確に思い出してみる事にします。2000年の春頃、私は大学内の稽古場で、じょん(当時は中川)と劇団名を考えていました。 事前に渡辺美弥子から「漢字がいい」という要望は受けておりまして、思いつくままに面白そうな響きの名前を言い合っていたんですが、なかなかまとまらず。当時、私は舞台セットを大仰に転換する芝居を好んで作っておりまして、役者を乗せたまま舞台を回転させるという舞台装置を使用しておりました。もちろん動力は人力です。古代ローマの奴隷のごとく屈強な男たちが手で押して舞台を回転させます。 「嗚呼、いつかはすべて電動で回る舞台にしたひ。其れこそ帝國劇場のやうな」 そんな思いもあり、漢字と言われ「電動」という単語が頭をかすめておりました。 その時、不意に稽古場に遠藤夏子が入ってきました。 おもむろに、じょんは一枚の紙にスラスラと文字を綴ったのです。

「電動夏子安置システム」

もう、「安置」とか「システム」とかがどこから出てきたのかはわかりませんし、 遠藤夏子って誰ですかとか、「遠藤」と「電動」のダジャレとか、 「安置」と「アンチ(anti)」がダブルミーニングになってるとか、 頭文字をとると「DNA-Systemだ」とか、だからどうしたって感じです。 ともかく、電動夏子誕生の瞬間です。ね?意味分からないでしょ? 結局、思い出したところで私もよくわかってない。つまりは、このラストの「おお、それだ」に至った高揚感あたりで正確さが失われ、細かく伝え切れず、また共感される事もなかろうと。

ゆえに最近では劇団名由来を聞かれると、「それは、へへへ…」と妙な笑顔で返す方法を覚えました。

そんな劇団名とともに、「ロジカル・コメディ」という趣の変わった劇団の作風が浸透し始めました。 作品の奇妙さが、ようやく名前の奇妙さに追いついたかのと思います。名は体をあらわしますね。 ちなみに覚えているところで挙げれば、劇団名候補の中に「ベルリン発」ってのがあったかと思います。

そうなっていたら、この劇団の歩みがどうなっていたかと思うと、また興味深いですね。 ちなみに、私の名前は、近所の神社の神主がつけたそうです。

だからどうだって言うんだ。

電動夏子安置システム

主宰   竹田哲士

 

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